[ 画像処理応用 ] |
平成23年3月11日に発生した東日本大震災により,岩手県及び宮城県沿岸部では津波による 甚大な被害に見舞われた. 現在,多くの研究機関で高分解能衛星写真及び空中写真を公開しており,その画像情報を 基に被災状況の判読結果が報告されているが,災害アセスメントや防災のあり方を検討す る資料の報告は少ない.
災害アセスメントとは実際に災害が発生することを予想して,予め災害時における身の回 りの環境について評価,確認をしておくことである.災害アセスメントは現場把握,地震 想定被害,対策検討のプロセスにより実現され,本研究では現場把握に相当する部分につ いて,空中写真から住宅地における被害の有無を確認し,定量的に分析,評価する手法を 提案する.本研究の成果は,災害アセスメントの現場把握において寄与できると考えられる.
住宅地を対象として震災による家屋の倒壊等の被害を検出,解析する手法として,離散コ サイン変換とケプストラム解析を用いる. 離散コサイン変換は画像を周波数成分に分離す ることができるので,被災前後における各成分の変化を見ることで被害のある地域かどう か判別する.しかし離散コサイン変換のみだと,被害がほぼ無い,または少ない地域でも 高周波成分が減少していると誤検出してしまう可能性があるため,それを訂正するために ケプストラム解析を用いる.
まず,離散コサイン変換による画像解析結果を示す.結果より,被災前(図1)と被災後 (図2)では,市街地の高周波成分の分布が異なっていることが分かる.
図1 被災前の市街地(一部) | 図2 被災後の市街地(一部) |
高周波成分が減少している地域は被災地域である可能性があるため,被災地域の検出する ためにケプストラム解析を用いる. これは,住宅や道路が一定間隔で並んでいることに着目し,被災の前後で画像の周期性が 変化すると考えたためである.
提案手法を図3, 図4の64x64画素の任意区域において適用した結果,6カ所中5か所の被害の 検出が可能であった.
図3 被災前の市街地 | 図4 被災後の市街地 |