[ 福祉・教育支援 ]

Wiiバランスボードを用いたバランス訓練支援システム

リハビリテーションにおいて行われるバランス訓練は,主に理学療法士の主観で評価が行われている. 「良くなった」ことは,理学療法士は理解しているが,訓練をしている本人が実感することが難しい. また,現状の自身がどのような状態であるかも認識することが難しいのが現状である.

本研究では,Wiiバランスボードを用いたバランス訓練の支援システムを開発している.

市販のソフトウェア(ゲーム)では,利用者のレベルに対して難易度が高すぎる,という要望を受け, 以下のような要件を満たすシステムを開発した.

開発したシステムでは,

が可能であり,過去のデータと比較する機能を有している.なお,マーカーの出現パターンは,理学療法士の要望多数用意してあり,ランダム出現も可能となっている.

Wiiバランスボード 訓練画面
Wiiバランスボード 訓練画面(緑:ターゲット,赤:重心位置)

複数の軌跡表示および統計量提示
複数の軌跡表示および統計量提示

訓練に継続利用した結果,

という評価が得られた.


https://youtu.be/-ENrSBxVpH0

    [関連発表]
  1. 大内拓雄, 松田浩一, 熊谷悠太, "重心移動の可視化システムの開発と訓練への活用", 情報処理学会第80回全国大会, 5ZD-04, 2018.03.
  2. 熊谷悠太, 松田浩一, "重心移動訓練における苦手方向の可視化表現に関する一検討", 情報処理学会第81回全国大会, 2ZE-5, 2019.03.

かかと運動の周期性に着目した歩行リハビリ効果の定量化

リハビリには,基本的動作能力の改善などを通じて実用的な日常生活における諸活動の 自立を図るため,様々な運動療法,実用歩行訓練,日常生活活動訓練,作業療法が行わ れる.この中の1つである実用歩行訓練で行われるリハビリ効果の評価は,理学療法士が リハビリの前後で歩行時の着床位置・歩幅・歩行時間を計測した結果から評価している.

歩行訓練においては,一人で転ばずに歩行できる能力が重視される.この能力が十分で あるかどうかは,前述の数値的な指標を参考に,これまでの経験やそれに基づき,総合 的に主観による解釈をすることで歩行動作の評価をしている(図1).

図1 歩行観察 図2 健常者と患者の歩行リズム
図1 歩行観察 図2 健常者と患者の歩行リズム

評価要素の中心は主観であり,健常者との比較を頭でイメージしながらどのような筋肉 を鍛えればよいかを考えてリハビリプログラムを作成し実践している. したがって,理学療法士によって判断基準が異なったり,経験不足による判断の迷いが生じる. そのため,客観的に捉えることが難しい歩行動作の変化の量やリハビリ効果をグラフや 数値として捉えることによってリハビリ効果を定量的に捉えたいという要望がある.

そこで本研究では,小型無線センサを用いた歩行リハビリ効果の可視化法を提案する. 小型無線センサ(図3)は,20g程度で装着が簡易である上,動作の詳細な情報を精度良く取得することができる. 本研究では,角速度を用い,かかとの動作を回転運動に見立て,かかとにセンサを設置し,その動作を可視化する(図4).

図3 小型無線センサ 図4 かかとへの設置
図3 小型無線センサ 図4 かかとへの設置

歩行周期とかかとの動き
歩行周期とかかとの動き

5mの歩行について,正面と横方向にカメラを設置し,本研究室で開発しているカメラ・センサ統合システムを用いて データを取得した(図5).本システムでは,カメラとセンサを同期してデータを取得することができ,センサデータ の意味と動作を結び付けることができる.

図5 実験環境 カメラ・センサ統合システム
図5 実験環境 カメラ・センサ統合システム

取得した角速度から踵接地の時間を求め,両足の一歩ごとの時間を求めると,どのようなリズムで歩行を しているかを可視化できる(図6). 可視化結果を見ることで,リズムが一定であるか,乱れているかを視覚的に判断することができる(図7). また,この時間の標準偏差を求めることで,そのばらつきも知ることができる.

図6-1 歩行リズムの可視化 図6-2 かかと接地と時間
図6-1 歩行リズムの可視化 図6-2 かかと接地と時間

図7-1 一定のリズム 図7-2 乱れたリズム
図7-1 一定のリズム 図7-2 乱れたリズム

また,かかとが同じ動きを繰り返し行えているかどうか,も取得した角速度から求めることができる. 本研究では,「良い一歩」を定義し,その一歩との相互相関をとることで全体の良さを可視化した(図8). 数値が1.0であれば「良い一歩」と完全一致,0.0に近づけば「良い一歩」からは離れていることを示せる.

図8-1 ほぼ一定の動きができているとき 図8-2 動きに乱れがあるとき
図8-1 ほぼ一定の動きができているとき 図8-2 動きに乱れがあるとき

    [関連発表]
  1. 松原淳一,郡未来,高橋智也,松田浩一, "転倒予防のための歩行バランスに着目した歩行解析", 情報処理学会第70回全国大会, 3ZH-6, 2008.3.
  2. 澤田尚大, 松田浩一, 松原淳一, "加速度センサを用いた歩行動作の特徴検出における一検討", 平成20年度電気関係学会東北支部連合大会, p. 85, 2008.08.
  3. 澤田尚大,郡未来,松田浩一, "腰・肩に着目した歩行リハビリ効果の定量化についての基礎的検討", 情報処理学会第71回全国大会, 2ZC-1, 2009.3.
  4. 澤田尚大,郡未来,松田浩一, "歩行周期抽出による歩行変化の可視化についての一検討", 情報処理学会,第138回グラフィクスとCAD研究会,Vol.2010-CG-138, No. 7,2010.02.
  5. 中村範斗,松田浩一, "歩行リハビリ支援のための腰部に着目した変化の定量化", 情報処理学会,第73回全国大会,6ZE-3, 2011.03.
  6. 仁昌寺克行, 松田浩一, "踵運動の周期性に着目した歩行リハビリ効果の定量化", 情報処理学会第74回全国大会, 5ZH-1, 2012.03.

色立体の3次元表示による配色学習支援

配色とは、最も人間の感性や経験に頼り熟練を要する作業の一つであり、配色カード の色サンプルなどを組み合わせ、作業を行なう(図1)。紙面上においては色相・明度・彩度 の3属性を色相環およびトーンによって表す方法が学習に用いられてきた。色相環お よびトーンにおいては、色の位置関係が意味を持ち、規則性のある配置によって評価 する手法もある。

色空間は3次元的に表せるため、その空間内で配色を行うことも学習方法の一つとして 利用する価値があるが色立体は非常に高価であり、個人で教材として購入することは 難しい(図2)。

図1 配色カード 図2 色立体
図1 配色カード 図2 色立体

本研究では、配色の3次元的な理解を目的とし、3次元CGによる色立体教材を作成した (図3)。この3次元CGによる色立体を用いることにより、色立体上における色評価の際 に、付箋などを色立体上に張り、色の位置関係を確認するような作業を容易にする。 色立体ではその規則性をひと目で認識することが困難であったが、本教材では、色相 板を並列に配置することにより、配色の位置関係を容易に把握することが可能となる (図4, 5)。また、色見本を直接選択するだけでなく、画像からの色情報の入力も可能 としているため、既存のデザインに対する評価にも応用可能であると考えている。

図3 CG色立体 図4 CG色立体(並列) 図5 位置関係の提示
図3 CG色立体 図4 CG色立体(並列) 図5 位置関係の提示

    [関連発表]
  1. 木村美江, 菊池清文, 松田浩一, 町田芳明, "PCCS色立体の3次元表示による配色学習支援", 情報処理学会第67回全国大会, 3P-7, 2005.3.


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